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2022年7月17日 (日)

Clinical 歯科における薬剤耐性 (AMR)対策 ⑤

続き:

5. 歯科における AMR対策の調査結果

 歯科では、医科の約10%の量の抗菌薬が使用されている。よって AMR 対策のためには医科のみならず、歯科における抗菌薬適正使用も重要である。対策を進めていくためには、歯科領域における抗菌薬処方の問題について評価して可決方法を模索することが必要だ。そこで我々は、歯科医師に対して AMR への意識、抗菌薬処方、採用抗菌薬などについてアンケート調査を行った。これはすでに日本感染症学会の学術誌である感染症学雑誌で報告されているが、今回はその結果を引用し解説を加えている。

 この研究に関わった研究者のうち一名が講師として参加した「歯科における抗菌薬の使い方」講習会の参加者のうち、同意が得られた歯科医師方のみを対象に無記名式のアンケート調査を行った。アンケートは回答者の年齢や勤務先の種類別などの属性情報のほか、AMR に関する知識、業務での具体的な取り組み、最も処方する機会の多い抗菌薬を調査した。また院内で抗菌薬を採用している歯科医師に対しては、院内で採用している抗菌薬の数、種類、その薬剤を採用した理由を調査。加えて、各疾患の処置における抗菌薬予防投与のタイミングと処方日数についても調査。

 このアンケートには54名の歯科医師が回答している。男性38名、女性16名。年齢中央値(四分位範囲)は 48.5 (40~55) 歳、診療車勤務が51名(94.4%)、院内処方ありが45施設(83.3%) であった。AMR という言葉を知っていると回答した歯科医師の割合は全体の83.3%だ。実際に何か対策を取っていると回答した割合は42.6%だ。この内訳をみると、処方期間の短縮が最多で19/21名(82.6%)、患者への教育が10/21名(47.6%)、ガイドライン遵守が5/21名(23.8%)であった。

 また、業務上で第一選択薬としている抗菌薬は、56.8%がセファロスポリン系薬と回答、次にペニシリン系薬 29.5%、マクロライド系薬 13.6%と続いた。院内採用されてる抗菌薬として頻度が高かったのはセファロスポリン系薬で、ペニシリン系薬は全体の48.8%、マクロライド系抗菌薬は48.8%であった。抗菌薬の選択上の理由は「先輩に習った」が63.6%と最多。処方時の予防投与のタイミングは「術後」が78.6%と最も多かった。術後投与している期間は「3 日間」が79.6%と最も多い。

 この調査に参加したのは「歯科における抗菌薬の使い方」講習会の参加者である。AMR 対策に意識の高い集団であると推測される。また歯科領域の診療ガイドラインの記載に基づけば、基本的に第一選択薬はペニシリン系抗菌薬となるはずだ。実際には参加した歯科医師はセファロスポリン系薬の処方の頻度が高く、ほとんどの院内採用薬にセファロスポリン系薬が含まれていた。抗菌薬の選択においては「先輩の意見」を根拠とするという回答が多いこと等からは、ガイドラインの内容の告知や、研修会の開催等教育の機会を十分確保し、学部教育のみならず生涯教育として、繰り返し継続して知識を定着させていくことの重要性が示唆された。

 本調査に参加したのは「歯科における抗菌薬の使い方」講習会の参加者である。AMR 対策の

 

 

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