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2022年7月24日 (日)

デジタル・デモクラシー キッズ・テック―狙われる子供たち ⑤

続き:

  デジタル環境が増幅させる肥満

 2020年2月、国連児童基金(UNICEF)、WHO、ランセットによって招集された世界の子どもと若者の保健専門家40人以上からなる委員会は、レポート「世界の子どもたちの未来の行方」を発表した。ここでは子どもの健康を害するものとして、気候変動と並び有害な商業マーケティングがあげられている。同レポートによれば、肥満の子どもと若者の数は、1975年の1100万人から2016年には1億2400万人と11倍にも増加している。ジャンクフードや砂糖入り飲料水の広告マーケティングに子どもが晒され、不健康な食品の購入や過体重および肥満に綱gっているとレポートは指摘。

 子どもたちの肥満増加の背景には、、ビッグ・テックとビッグ・フードによるオンライン・ターゲティング広告や商品開発がある。2018年、ペプシコはマウンテン・デュ―(同社の飲料ブランド)に新たな商品として「マウンテン・デュー・Ampゲーム・フューエル」を発売した。通常の飲料よりも高果糖コーンシロップ、カフェイン、各種ハーブなどが多く含まれることで、「ゲーム中の注意力と正確さを高める、ゲーマーを対象とした新しいエナジー・ドリンク」というのが売り文句。「ゲーム中でも蓋を開けやすく、滑りにくいグリップ」などデザインの工夫もされている。こうした商品がインフルエンサーを通じて、あらいはゲームそのものと連動し、子どもたちへの広告として日々発信されている。

 もう一つの事例を紹介しよう。2020年12月、ファストフード大手のウェンディーズは、Twitch(ゲーム配信に特化した動画配信サービス、2914年にAmazonが買収)、フードデリバリーサービスのUber(ウーバー)、そして Twitch 上で大人気の 5 人のプレーヤーと提携し、「ゲームをやり続ける(Never Stop Gaming)」メニューを開始した。5人のプレーヤーそれぞれにセットメニューが作られ、彼らのファンたちは Twitch チャンネルを通じてそれを注文し、Uber が配達するというものだ。その過程では、ギフトカードやゲーム機などの景品が当たるチャンスもある。オンラインゲームとファストフード、そしてビッグ・テックはこのように融合して、一つの壮大な市場を形成している。オンラインゲーム環境は、個人の追跡とターゲティングのためのビッグデータ広告システムの一部になっているのだ。

 ゲーム空間はすでにバーチャルリアリティの世界ではない。例えば、 GPS を利用したモバイルゲーム「ポケモンGO」は、ポケモンを追いかける人びとを、実際に物理的に移動させることができる。例えば広告を出したレストランや店舗の前に、ポケモンを獲得しようとする多数のユーザーを「連れていく」ことができるのだ。あるいは、オンラインゲームの途中に、自動販売機が現れ、プレイヤーのアバターが好きなドリンクを飲むという仕掛けもある。プレイヤーである子供たちへの広告効果は絶大なものだ。

 これら食品・飲料のターゲティング広告は、米国では黒人やヒスパニック系など有色人種の子ども・若者を明確に狙っているという分析もある。2019年、コカ・コーラは「ファンタ」のターゲットマーケティングに改めて力を入れることを発表。フルーツ風味の砂糖入り清涼飲料水は、国外のヒスパニック系消費者に人気を保ちながら、近年米国内での人気が落ちていた。「コーラは今、このブランドが米国で急成長しているヒスパニック系住民にヒットすると考えている」と小売業界誌は報じている。

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