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2022年7月15日 (金)

Clinical 歯科における薬剤耐性 (AMR)対策 ④

続き:

4. 抗菌薬適正使用

 日本では抗微生物薬の使用量の 1日量の 92.4%が経口抗菌薬である。しかもいわゆる広域抗菌薬と呼ばれる、第3世代セファロスポリン系、マクロライド系、フルオロキノロン系の占める比率が極めて高い。これは世界的に見ても飛び抜けて高い。東らは 2005年の 1月から3月のレセプトデータを検証し、非細菌性上気道感染症の約 60%に抗菌薬が処方されていたと報告した。その処方内容は第 3 世代セファロスポリン薬(46%)、マクロライド( 27%)、キノロン(16%)の順に多く、また、病院よりもクリニックでより処方頻度が高かった。よって日本ではこのような内服の広域抗菌薬の使用に課題があると考えられる。

 肺炎予防などの目的で感冒の患者に対して抗菌薬が処方されることがある。感冒も含めた急性気道感染症の患者何人に抗生物質を出したら、一人の肺炎を含む合併症を防げるかという研究があり、4000人に抗生物質を出すコスト、副作用のリスク、耐性菌を生じさせるリスクを考えれば、利益よりも害のほうが大きく、合併症予防としての抗菌薬の使用は勧められない。

 このような状況を踏まえ、日本ではまず外来におけるウイルス性上気道炎や感染性腸炎などの通常抗菌薬治療を必要としない疾患への診療の適正化を推進していくこととなった。よって平成29年度に厚労省によって「抗微生物薬適正使用の手引き」がとりまとめられた。本手引きは、主に外来診療を行う医療従事者を対象として作成している。対象の疾患としては、不必要に抗菌薬が処方されていることが多いと考えられる急性気道感染症および急性下痢症だ。また、併存疾患のある患者の診療など、専門家の判断が必要になるような難易度の高い事項は本手引きの対象外だ。本手引きの範囲を超える内容については、既存の学会のガイドラインを参照することや専門医に相談することが勧められる。

 急性気道感染症において、抗菌薬が必要な症例と不必要な症例を見極めるために有用な分類として、米国内科学会による分類がある。これは急性気道感染症を鼻症状(鼻汁、鼻閉)、咽頭症状(咽頭痛)、下気道症状(咳、痰)の 3系統の症状によって、感冒(非特異的上気道炎、普通感冒)、急性副鼻腔炎、急性咽頭炎、急性気管支炎の 4つの病型に分類するものである。この分類で解説が行なわれている。

 発熱の有無は問わず、鼻症状(鼻汁、鼻閉)、咽頭症状(咽頭痛)、下気道症状(咳、痰)の 3系統の症状が「同時に」、「同程度」、存在する病態を有するウイルス性の急性気道感染症が感冒である。

 感冒の自然経過においては、まず微熱や倦怠感、咽頭痛を生じ、続いて鼻汁や鼻閉、その後に咳や痰が出てくる。発症から3日目前後に症状のピークが訪れ、全体として発症から 7~10日間で軽快していく。ただし、感冒の場合に咳が 3週間ほど続くことがあるので、留意すべし。しかし、咳が持続するからと言って必ずしも抗菌薬が必要な病態であるとは限らない。その一方で、自然経過から外れて発熱するなど症状悪化や、一旦軽快傾向にあった症状が再度増悪した場合には、合併症として二次的な細菌感染症を考える必要がある。

 本手引きでは、急性気道感染症のいずれかの病態でも、基本的には合併症がない状況であれば抗微生物薬が必要ないことが推奨として示されている。例えば本手引きでは、感冒に対しては抗菌薬投与を行わないことを推奨しています。

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