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2022年8月24日 (水)

サイバー空間の新技術はどこから犯罪になるのか ②

続き:

           Winny 事件

 インターネットで 100 Mbps (メガビット毎秒)が速いといわれていたころ、あるプログラマーが、ファイル共有のためのソフトを開発した。そのプログラマーはインターネット上の匿名掲示板上で仕様等について不特定の者らと協議し、持ち前の優れたプログラミング能力を用いて、ファイル共有ソフト Winny を作った。

 Winny の主たる機能は次のようなものである。インターネット上で不特定または多数の共有してもよいファイルを自身の手元にある(ローカル)コンピュータのあるフォルダに置く。すると、インターネット上の他のコンピューターのユーザーが、共有フォルダにあるファイルを暗号化したファイルを、検索(ファイル名も暗号化されるが、暗号化される前のファイル名で検索できる)、ダウンロードすることが可能になる。

 各ユーザーは、ダウンロードが完了したら Winny を用いてファイルを複号すること(暗号化前の状態に戻すこと)ができる。こうして各ユーザーは、他の人にあげてもよいファイルを共有フォルダに入れることによって第三者に提供しつつ、欲しいファイルを検索してダウンロードすることができる。検索もファイルの送受信も、中央のサーバを介さないで可能になる、という意味で、Winny は画期的なファイル交換ソフトだとされた。中央のサーバが無数のユーザーによる無数のファイルの受送信機能を担っていたら、サーバへの負荷は過大になる。中央のサーバが検索機能を担っていたら、そのサーバが落ちている間は検索をすることができなくなる。こうした問題の双方を解決したのが Wnny であって、ネットワークの安定性、及びファイル交換の効率性が最適化されたピアツーピアソフト(peer to peer' ネットワーク上に集中管理するサーバを置かず、各コンピュータ(ピア)が、互換性のあるソフトを用いて、対等な関係で互いにデータ処理を行う方式)だと評された。

 画期的な技術の体現であった Winny であったが、著作権侵害に使われてしまうことになった。ゲームソフト等の著作物を含むファイルを共有フォルダに入れ、データを送信できる状態にした行為について、著作権者がもつ権利である公衆送信権(不特定または多数の者へ著作物を送信する権利)を侵害するケースが発生したのである。Winny を用いて公衆送信権を侵害した者が起訴され、有罪になるだけで話は終わらなかった。Winny を作ったプログラマーも公衆送信権侵害を幇助したという理由で逮捕・起訴されたのである。

 公衆送信権侵害という違法な利用を強く勧めてさせたのでも、Winny を作ったプログラマーと Winny を違法に利用した者とが一緒に悪巧みをして、公衆送信権を侵害したわけでもない。が、調査機関は、公衆送信権侵害を幇助したと考えたわけである。幇助犯について規定している刑法62条を抽象的にみると、同条は、他人(正犯)の犯罪行為を助長促進する行為をした者を処罰する。公衆送信権侵害行為をした者がここでは正犯である。

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