« デジタル・デモクラシー 暗躍するデータブローカー ③ | トップページ | サイバー空間の新技術はどこから犯罪になるのか ② »

2022年8月23日 (火)

サイバー空間の新技術はどこから犯罪になるのか ①

西貝 吉晃(千葉大学大学院専門法務研究科准教授)さんは 「世界 8」に載せている。 コピーペー:

    サイバー犯罪を「類推」で解決できるか

 有体物の支配から解放され、新しい技術的な仕組みから構成されるサイバー空間には、物理的な制御によって成り立つ物理空間とは

異なる点がある。――SNS(ソーシャルメディア)はオフラインとは別のコミュニケーション手段である。サイバー空間は情報技術によって支えられており、日々新技術が生まれている。サイバー空間で使われる情報技術は二面性をもち、新たなビジネスモデルにも、新たな違法行為にも繋がる可能性がある。特任新技術を用いて行なわれる行為について、妥協性を欠くように見えるものもあるが、それが本当に違法だといえるのか、その判断が難しいこともある。

 違法との疑いが生じた行為が本当に違法なのか。特に新技術的仕組みに対して社会的にみて賛否両論がある場合に、これを法律の観点から判断することは難しい。そのようなときに有用なのが、既存の別の事案の類推である。

 ここでいう類推というのは、別事案の判断と同じ構造を持つ判断手法を使いこと。条文の意味内容を類推により求めることにより、条文の文言じたいが指し示す内容よりも広く犯罪の範囲を捉える、いわゆる類推解釈は刑法で禁止されているが、それとは違う。ここでいう類推とは、検討する条文の文言が不特定的で、解釈に幅があるために、類推解釈などしなくても要件を充たすようにみえるが、それだと妥当でないために、他の事案における判断を借りて、条文から得られる処罰範囲を限定するものである。

 この類推によれば、AとBという二つの事案の間に類似性が認められる場合、Aの場合に処罰しない理由とA、B間の類似性に根拠を与えることで、Bでも無罪にできる。AとBという異なる事案を、問題となる法令の適用との関係で、類推が可能なレベルに似ていることを論証する必要がある。このような一見すると回り道にもみえる方法を使うことにも意味がある。何故なら、眼前の新事案であるB自体に対する社会的評価が定まらない中で、既存の社会通念に基づいたAに対する「その行為を許してよいか否か」の判断を転用でき、そうした判断手法には安心感もあるからである。

 サイバー空間における新しい技術を用いた事案を判断する際に、この類推がどのように利用されるのだろうか。まず、新技術の提供を物理世界の物の提供と類推して考えることが可能な例としての Winny 事件を検討する。ただし、新技術を物理世界の類推で説明できるという前提を採ることができない場合もある。そこで次に、サイバーの世界での事案に、既存のサイバー世界での事案の類推をした事例であるコインハイブ事件をみてみたい。

 

« デジタル・デモクラシー 暗躍するデータブローカー ③ | トップページ | サイバー空間の新技術はどこから犯罪になるのか ② »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事