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2022年8月 6日 (土)

TOPICS 事例から学ぶトラブル予防と早期解決の方略 ⑥

続き:

3. 事例 (返金トラブル)

1) 事案の概要

 歯内療法(保険外診療・同意書なし)の予後不良のため、患者から全額返金と他の歯科医院での再治療費の要求あり。早期解決を目論み、院長は要求額を満額支払った(合意書なし)。3年後、患者から慰謝料請求(患者と未精算のため、慰謝料できる状況)。

2) 当事務所への相談後の経過

 当事務所にて対応。任意交渉いて金額の折り合いがつかず、患者が民事調停を申立て。

 民事調停にて、患者から院長の説明内容についての音声データが提出される。少なくとも、治療行為自体の注意義務違反があるとまでは言えないが、説明に不十分な点があったことは認めつつ、要求額からさらに減額に成功して調停成立(精算条項、口外禁止条項あり)。

3) 考察

(1) 返金の割合

 医療契約は、請負契約のように結果を保証するものではない、医療水準に照らして適切な行為を行う義務を負う準委任契約(民法656条、643条)と解釈されている。そのため、医療契約は、基本的には民法上の委任の規定が適用され、原則として、医療行為を行った割合に応じた診療報酬お受領できる(民法648条3項1号2号)。

 保険診療では、基本的には、その都度行った分の治療費(一部負担金)の支払を受けるため、行っていない分の治療費の返金は発生しないが、保険外診療で、事前に治療費全額を受領しているケースでは、治療途中で医療契約が終了となると、原則として、治療を行っていない分の治療費を返金する必要がある。

 具体的な返金額は、治療の内容や治療経過など、様々な要因が関係してくるため、個々のケースによって異なるが、治療開始時に想定していた治療プランのうち、どの程度進んだのか、実費がどれくらいかかったかなどを考慮して判断する。もっとも、客観的に「どの程度進んだのか」という判断が難しい場合もあって、患者が理解できないことも少なくない。そのため、紛争予防の観点から、保険外診療の詳細な内訳を定めるとともに、ベースとなる返金基準を定め、事前に患者に示すことが有用である。

(2) 返金不可とする特約(不返還条項)

                   次の回に続く。

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