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2022年8月16日 (火)

人間と科学 第337回 転換期を迎えるエネルギーシステム(4)―④

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 対照的に、後者のバックキャスティング型は、まず先に目標を定め、その達成のために必要な諸条件やとりうる軌跡を示すものだ。ネット・ゼロ・エミッション 2050 年実現シナリオ「( 50年ネットゼロシナリオ)」は、「1.5℃目標」と整合するように作られたものだ。

 フォーキャスティング型の中で、「公表政策シナリオ」は、具体的に進められている以上の政策のギアチェンジを想定していないという点で、最も「自然」の成り行きに近いといえる。そこから「表明公約シナリオ」や最終的にはバックキャスティング型の「50年ネットゼロシナリオ」との差異が重要になる。

 WEO-2021によると50を超える国がゼロエミッション目標を宣言しているが、まだ具体的な政策で実現を担保できているところはない。(1)現状からどの程度施策を上乗せする必要があるか? そして(2)そうした国のすべてが宣言を首尾よく達成すればそれで十分なのか? 不足があるとすればどの程度か? 各シナリオを比較することで、こうした疑問への回答や課題、今後取るべき行動を考えるヒントが得られる。シナリオ別に排出量の経路の図(公表政策シナリオ・表明公約シナリオ・50年ネットゼロシナリオ)がみると2050年には大きな公約実現へのギャップ・野心度のギャップの拡大が出る。

 (1)各国が宣言通り達成した場合は「表明公約シナリオ」で示されるが、図で明らかな如く「自然体」の「公表政策シナリオ」との乖離は大きく、「公約」実現が容易でないことが分かる。WEO-2021 ではこの差を「implementation gap (公約実現へのギャップ)」と呼んでいる。

 そして(2)無事公約を達成したとしても(「表明公約シナリオ」)、「1.5℃目標」と整合的な「50年ネットゼロシナリオ」からはまだ遠いことが分かる。この差は「ambition gap (野心度のギャップ)」と呼んでいる。

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