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2022年8月 7日 (日)

TOPICS 事例から学ぶトラブル予防と早期解決の方略 ⑦

続き:

(2) 返金不可とする特約(不返還次項)

 中途解約しても送金不可とする診療契約を結んでいる歯科医院も無受けられるが、このような不返還条項を入れた診療契約を結ぶことは望ましくない。

      返金不可とする特約が望ましくない理由

  ① 患者と揉める原因となりやすい

  ② 消費者契約法上、中途契約時に不返還条項が無効になる可能性がある

  ③ 仮に特約が有効であったとしても、医療機関側の注意義務違反を原因とする返金要求の場合、民法上の損害賠償責任(治療費相当額、慰謝料その他の損害賠償責任)は免れない

(3) 返金手続

 患者との間で一部もしくは全部の治療費の返金について合意しても、返金後に慰謝料など別の理由をつけて金銭要求があるケースもあるため、返金する際には、可能な限り、精算条項(今回の返金以外に精算すべきものはないこと)を含めた合意書を交わすことが有用である。

(4) 前医の批判

 後医による前医の評判が引き金となって、送金トラブルが発生することも少なくない。「後医は名医」という言葉があるように、後医は、前医の治療方針や治療内容踏まえて対応できるため、前医よりも情報量が多く、より適切に対応しやすい。そのため、医師としての優劣にかかわらず、前医よりも後医のほうが、立場上優位であることが多く、後医自身も、前医よりも優れていると錯覚に陥りやすい。このような有意的立場である状況の下、患者の言葉を鵜吞みにして、安易に、前医の治療を否定するケースも見受けられる。

 このような後医の発言は、医療人として問題であり、歯科医師として、「品位を損するような行為」(歯科医師法7条1項)となる可能性もあるため、注意が必要である。

 もっとも、明らかに誤った医療水準以下の治療がなされていると思われる場合に、その状況を改善しなければ、医療の質を担保できなくなる。また、診療時の客観的な事実を伝えなかったことが、説明義務違反と判断されることもある。そのため、少なくとも、客観的事実に反することを伝えたり、大きな問題点を黙認することは差し控えるべきである。前医診察時の口腔内の状況や前医と患者とのやりとりは客観的に明らかではないことが多いため、主観的な評価をせず、現在の客観的な状況を伝え、現時点でどのような方法が最善なのかという点にフォーカスして対応する。場合によっては、患者の同意のもと、前医に問い合わせを行うことも有用である。

 

 

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