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2022年9月15日 (木)

TOPICS 歯科領域における日本語オノマトペの奥深さ ⑦

続き:

終わりに

「ハレ」とは民俗学上、特別の日(節目)又は非日常を表す概念であり、「ハレ」」の日にはその日だけの特別な行事があり、その行事に伴う特別な食事が提供される。超高齢社会となった現代日本では、還暦以降の節目節目での「ハレ」の日を慶事として祝い、家族で特別な食事会が開かれることが一般的である。その際、そこに集まる家族全員が、おふくろの味を含めて食材の一番おいしい食感や料理の味付けを共有する必要があるため、健康な歯と口の状態、すなわち「健口」であることこそが、幸せな「健康長寿」を導くことになる。

 左脳は分析的な理性を、右脳は総合的な感性を司ることから、あるものを食べた時、まず右脳で「おいしい」か「まずい」かを直感的に判断し、左脳にある言語中枢を通して「おいしい」、「まずい」という言葉を発語することになる。さらに「おいしさ」や「味」が複雑になれば、左脳えの分析から発語までに時間がかかり、その「おいしさ」の言語表現も堅苦しくなるTVのグルメ番組での食レポーターが堪能だと評される芸能人は、「フワフワ」、「トロトロ」、「シャキシャキ」などオノマトペを効果的に活用する傾向にある。

 これは食べ物、食材を口に入れた瞬間、直感的に「おいしさ」を感じた右脳が、すばやくシンプルに右脳発信での「食感のおいしさ」を表す日本語オノマトペを発語することで、視聴者の直感的な右脳に即座に訴えて共感を得やすくなるのかもしれない。左脳による理性で言語化すると、微妙なニュアンスの感覚が言語化されずに削ぎ落とされてしまう可能性もあるが、オノマトペは、言葉にするのが難しい細かい感覚までも拾えるところが、伝わりやすさに関係するものと考えられる。

 以上、食、食感、認知症患者の食支援、口腔ケアなどには、論理的思考の左脳にある言語中枢から発せられる言葉より、直感的な右脳で反応するオノマトペが有効なコミュニケーションツールとしての可能性を秘めていると感じずにはいられない。さらに食感のセンサーである健康な歯と歯根膜を維持・管理するため、口腔ケアおよび口腔健康管理を心掛けることの大切さを、日本語オノマトペの豊富と奥深さを通じて、啓発・発信していくとともに、調理師学校などへの働きかけや講義内容について、京都府歯科医師会として培ってきたノウハウを、データなどを、必要であれば喜んで提供、共有したい。

 なお本稿の一部は、2020年度「健康寿命延伸」に関するアイデア募集(主催:帝人株式会社、NOMON株式会社、共催:プロダクティブ・エイジングコンソソーシアム)において特別賞に選定された。

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