HIV 陽性者を歯科医師が診るということ ⑪
続き:
「7. S 歯科医院(東京)」の後半。
Q. HIV 陽性者の診療受入れにあたって師匠、問題はあった? 対応は?
支障、問題はなし。診療室が個室でないため、プライバシーを守るために配慮が必要でした。それで、診療前に患者が持参した診療情報提供書をお互いに確認して、診療室内での HIV に関する医療面接は避けるようにしました。
Q. HIV 陽性者の診療受入れで、スタッフの感想等があれば教えてください。
スタッフ:院長先生から、どの患者さんに対しても感染症対応は必要なのでHIV 陽性者の患者さんといっても特別なことはないと説明を受けています。針刺し事故の対応も聞いているので心配ない。
Q. UIV 陽性者の受入れしていることを、他の患者さんは知っている?
当院受付には東京都から配布されている「HIV 陽性者受入れ医療機関プレート」を掲示、H・Pにも受入れ案内を載せている。
Q. 診療受入れをして良かったこと、スタッフの方の話題でも結構です。
HIV の歯科治療の受入れは、自治体からの要請で受け身的だった、受入れに伴い知識の必要性から講習会などに参加するようになった。それによって病気、特に感染症といっても差別するものでないことが学べるのです。また、自身の理念としている「いつでも、どこでも、だれでも歯科治療を必要な人に機会を与えること」を実戦できる。
スタッフは進んで研修会、講習会などで消毒、滅菌を学習し、HIV 陽性者を差別することなく診療体制が取れるようになった。
Q. HIV 陽性者の初診はどんな経緯か。
都内のエイズ診療拠点病院の専門医師からの診療情報提供書による紹介、または、通常予約により初診、問診にて HIV 感染症の治療を把握して対応する。
Q. HIV 患者さんの頻度は?
1 日 0~2人 週に 0~4人。
Q. 経皮的暴露時の予防薬の準備についての対応は 経皮的暴露があったときの対応?
治療の実施に当たり、事前に予防服薬についてスタッフに説明している。当院において過去、私自身を含め複数のスタッフが経皮的暴露を経験している。私自身の時の暴露はゲイツドリルによるもので擦過傷でした。CD4 値や血中ウイルス量を参考にして予防服薬はしませんでした。
スタッフが過剰に心配してしまった時には、拠点病院に準備されている予防薬の使用について担当医師と相談することもあったが、このスタッフも予防薬は服用しませんでした。
Q. HIV 陽性者の診療を拒否あるいは特別視している歯科従事者へ伝えたいこと、ご意見など
歯科医療従事者は、常に困難と思われる有病者の治療を行っています。患者の全身状態の把握を怠れば重篤な事態を招きます。そのため治療を安全に行う努力、困難だと思われる有病者の治療を安全に行う研修をしているはずです。HIV だけを特別視して治療にあたらないというのは医療従事者として倫理的にも残念に思います。多くの人が HIV については、それが社会に知られるようになった初期の 35 年以上前のイメージのままフリーズしているが、歯科治療はスタンダードプリコーションで十分に可能だ。HIV 感染リスクは B 型肝炎の 1/100 と言われている。もし患者から HIV 陽性者と申告されたなら診て、経験することが大事なことです。
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