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2022年9月11日 (日)

TOPICS 歯科領域における日本語オノマトペの奥深さ ③

続き:

2. 認知症患者の食支援・口腔ケア等におけるオノマトペの活用と効果

 認知症患者の食支援では、様々なオノマトペの活用がみられる。まず開口する時は、「口を開けてください」ではなく、「アーンしてください」。食べ物を噛み砕く際には、「嚙んでください」ではなく、「モグモグ・パクパクしてください」。食べ物の嚥下を促す際は、「飲み込んでください」ではなく、「ゴックンしてください」。誤嚥を防ぐためには、「吐き出してください」ではなく、「ペーしてください」。口腔ケアにおける歯磨きでは、「歯を磨いてください」ではなく、「ゴシゴシしてください」。歯磨き後のうがいは、「うがいしてください・ゆすいでください」ではなく、「ブクブクペー/グチュグチュペ―してください」。さらに風邪予防での喉うがいでは、「うがいしてください」ではなく、「ガラガラペーしてください」など、介護の場で日常的にオノマトペが効果的に使われている。遠藤らによれば、認知症患者の介護、特に食支援・口腔ケアの場では、オノマトペが効果的に活用されていることは、ベテランの介護士の間で経験的には周知とのことである。

 また慢性的な人材不足から外国人介護従事者が増加傾向にあるなか、神村による調査においてもオノマトペである「グチュグチュペー」は最も頻用されており、日本語の未熟な外国人介護従事者でさえも、口腔ケアで認知症を患う被介護者の「うがいを促す」のに有効であることが報告されている。

 オノマトペはまだ言葉を知らない乳幼児とのコミュニケーションツールとしても日常的に使われているので、「認知症患者は、言語において赤ちゃん返りしているのでは?」という疑問が生じる。筆者(河野)は特別養護老人ホームに入所している、認知症で言語に障害のある母親介護、とりわけ食支援・口腔ケアを経験、さらに認知症患者に対する介護士の献身的な介護の様子を間近に接してきた。そしてあらゆる場面でオノマトペの有効性は感じていたが、では「なぜ認知症患者の食支援・口腔ケアにおいてオノマトペが効果的であるのか?」を真正面から証明する研究はない。そこで第24回日本歯科医学学術大会(2021年9月)の e ポスターセッション、および2021年10月の第32回 近畿・中国・四国口腔衛生学会総会での発表でいただいた貴重な質問、コメントから考察を深めることができた内容について解説する。

                       続く

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