Science 長期療養する要介護高齢者における摂食嚥下機能と口腔内薬剤耐性菌の分布 ⑦
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4) 嚥下関連筋の廃用性萎縮予防としての「棒つき飴」をなめるリハビリテーション」
意思疎通や指示理解が難しくなった者に対する口腔機能評価法として、棒つき飴を用いた評価方法(Candy Sucking Test) とそれを応用したリハビリテーションを報告。棒つき飴をなめる際の1分あたり飴の重量変化を測定する舐摂機能検査として、市販の棒つき飴を2分間の検査時間中、可能な限りなめ続けるように術者が指示し、単位時間あたりの重量変化をCST 値と定義した。
この値は舌圧と関連することに加えて、嚥下時の口腔通過時間と有意に関連して、口の中に食物などを貯めてしまい、なかなか飲み込まないといったような食事時間の延長と関わる可能性が示された。
さらに、長期療養型施設 Aへ入所する認知症の要介護高齢者 25名(男性5名、女性20名、平均90.8±67歳)に、嚥下直接訓練として、棒つき飴を可及的になめるリハビリテーションプログラムに協力してもらった。対象者は MMSE が20点未満であるものの、食事中の頻回のむせや窒息のエピソードがない者であった。
一方で、認知面の低下に伴い、拒食や糖尿病、肝・腎機能が著しく悪化した者は除外。協力者は、いわゆる「老人性認知症」と呼ばれ、アルツハイマー型認知症や前頭側頭型認知症といった精査病名のついていない者たちだった。
イチゴ味の棒つき飴を用いて、1日1回10分間、術者が横に付き添って、患者が飴をなめるのを止めてしまったり、飴を咬んだりしないように頻回の声かけ等を行いながら、1週間に3回、昼食摂取前に訓練を6月間継続。そして、訓練後にCTS 値が 0.1gより多くなったものを増加群、それ以外を日増加群と定義。
結果として、増加は4名、増加群でCST 値が訓練前と比べて訓練後に大きく増加した(増加群:0.31±0.13g27g/min→0.69±0.27g/min、非増加群:0.52±0.16g/min→0.57±0.24g/min)。しかしながら、増加群と非増加群いずれも認知面、ADL、BMIは介入前後の比較において変化を認めなかった。唯一、BMIの変化量について、増加群では1.13±0.85kg/m×m、非増加群ではー0.53±1.76kg/m×mとなり、統計学的に有意差あり。
Tanakaらは、ベッドで寝ている者では、寝たり起きたりしている者と比較しても、統計学的にえんげのひんどは少なく、頻度が減少することで、嚥下関連の筋肉の廃用性萎縮が起こっていることを報告。
認知症を有する要介護高齢者であっても周囲の者の協力があれば、嚥下関連筋の廃用性萎縮予防と経口摂取の継続を目的としたリハビリテーションを通じて、口腔機能の維持改善や体重増加へつなぐことができる可能性が示された。
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