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2022年10月24日 (月)

Science 長期療養する要介護高齢者における摂食嚥下機能と口腔内薬剤耐性菌の分布 ②

続き:

1. 長期療養型施設における口腔内薬剤耐性菌の分布状況

 高齢者が長期療養型施設における薬剤耐性菌の動向は不明な部分が多い。薬剤耐性菌が要介護高齢者に対してどのような影響を及ぼしているのかも、ほぼ調査されていない。さらに、薬剤耐性菌は便検体、創傷治癒、痰などからの検出報告が大半、口腔内薬剤耐性菌が保菌されているかどうかも分かっていなかった。

 そこで、広島県内の長期療養型施設 A に入所・通院する要介護高齢者の口腔内薬剤耐性菌の有無を調査した。発見された薬剤耐性菌を分離の上、そのリスクファクターを解析するとともに、臨床的な背景と遺伝子型に基づく疫学的状況を明らかにした。対象者は要介護高齢者 98 名(男性29名、女性 69 名、 平均 83.3± 9.5 歳)で、長期入所者からデイサービス利用者までを含み、認知機能、日常生活動作(ADL)、要介護レベル、口腔機能は多岐にわたった。

 減菌綿棒で口腔内を拭い、保菌調査を行った。協力者には、まず朝食摂取後(または午前中の経管栄養後)平生行うように自己または他者による口腔清掃を実施してもらった。昼食接取前(または午後の経管栄養前)に、同一の術者が歯面、義歯表面、舌表面、頬粘膜、口腔底、口蓋等を専用の綿棒で拭い、試料を採取した。試料を薬剤耐性菌選択培地へ塗抹し、その培地で生育した菌を薬剤耐性菌と定義した。臨床学的情報として年齢、性別、基礎疾患、施設内の入所・利用フロア、摂食嚥下機能、義歯使用の有無、口腔清掃の自立の有無を評価した。

 その結果、32 名(33%)が誤嚥性肺炎の原因となる薬剤耐性菌を保有していることが明らかになった。そして、脳卒中の既往と胃ろう造設者に口腔内耐性菌を保菌する者が有意に多く認められた。

 発見された菌の詳細は、耐性遺伝子を保有する基質特異性拡張型βラクタマーゼ(Extended Spectrum beta Lactamase :ESBL) 産生大腸菌やカルバペネマーゼ IMP-1 産生緑膿菌などと、耐性遺伝子は保有しないもののバイオフィルムを高度に産生する Acinetobacter baumannii などが検出された。

 さらにバイオフィルム高産生性を示すものとしては、A.baumannii (POT104-12-10) に加えて、緑膿菌(カルバペネマーゼ IMP-1 産生、ST235)なども検出された。

 以上より、長期療養型施設利用者の約 3 割の者から口腔内耐性菌を検出した。そして、耐性遺伝子を持っていない A.baumannii においては類似したクローンを持つ菌も発見され、さらなる大規模調査が必要であることが明らかとなった。

 

   要介護高齢者98人中32名(33%)が口腔内に誤嚥性肺炎の原因菌を保有

1 A. baumannii Biofilm産生 24% Acinetobacter baumannii

2 カルバペネマーゼIMP-1産生緑膿菌(ST235 blaIMP-1保有) 13% Stenotrophomonas maltophilla

3 ESBL産生大腸菌(ST131 bla CTX-M-9保有 13% Other Acinetobacter spp.

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