人間と科学 第340回 永久不変の存在を求めて(1) ③
続き:
メートル条約の成立
メートル法が生まれたのは18世紀末、その後のヨーロッパでは国をまたいだ商取引が盛んになる。いわばグローバリズムの時代だ。また国境策定の測量や、大砲の射程を共通の単位で示す必要性が出てきた。科学技術がパワー・ポリティックスに取り込まれはじめた時代でもあった。sこでメートル法を共通の単位にしようと、国際条約・メートル条約が誕生した(1875年)。
この時、改めて測量や水の質量測定は行わず、それまで社会に浸透していたメートル・キログラムの長さと質量を継承した。ただし、当時最新の冶金技術を駆使して、あらためて原器(国際メートル原器と国際キログラム原器)を作り直した。1889年のことである。その材料は白金とイリジウムの合金。当時の判断としては決して錆びず、摩耗にも強く、慎重に扱えば10万年は使用に耐えると期待された。そして加盟国にはこれらのコピーが配布され、定期的にパリに保管された国際原器と比較することで各国の同等性は確保されると期待された。
これが冒頭の問い、場所が異なっても、時を経ても、「ものさし」や「はかり」の目盛が変化しない理由の一つである。あなたの手元のラボ天秤も、その精度を巡り巡ればこの国際原器にたどり着くのである。因みに日本は1885年にメートル条約に加盟し、このとき交付された原器のコピーは今も、筆者(臼田)の勤務する産業技術総合研究所に厳重に保管されている。
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