Clinical 薬剤性口腔乾燥とドライマウス診療 ①
戸谷 収二(日本歯科大学新潟病院副病院長・口腔外科教授・科長)さんと、松野智宣伝(日本歯科大学附属病院副院長・口腔外科教授、同大学生命歯学部口腔外科講座教授併任)の共通の論文の共著を載せる コピーペー:
はじめに
高齢者の増加に伴い薬物治療を受ける割合も多くなり、いわゆるポリファーマシーによる薬剤の副作用が近年取り上げられ対応が求められている。とりわけ、薬剤尾副作用として口渇が様々な口腔機能へ影響を及ぼし話題となっている。
一般的に、全身的な慢性疾患は加齢とともに増加し、その治療薬には口喝の副作用が多く、また服用する薬剤の種類が増えれば唾液分泌量はより低下することが知られている。唾液が減少することによりう蝕、歯周病をはじめ、義歯不適合、味覚異常あるいは口腔粘膜疾患などを生じやすくなるが、特に高齢者では摂食・嚥下障害、上部消化管障害あるいは誤嚥性肺炎など全身的にも影響を及ぼしたりする。
このように、口腔乾燥は様々な障害を生じることが問題となっている。本稿では口腔乾燥症の背景から、口腔乾燥症の新分類の紹介、薬物による口腔乾燥の実態とその対応となるドライマウス診療について述べる。
1. 口腔乾燥症(ドライマウス)の背景
本邦の口腔乾燥症の潜在患者数は約800万人とも3000万人ともいわれている。口腔乾燥症は唾液分泌量の低下だけでなく、口腔粘膜の保湿状態の低下、蒸発によるものから口腔乾燥感めで様々だ。口腔乾燥感の自覚は、出液分泌低下や口腔粘膜の保湿度低下、唾液の粘膜亢進、そのほかの疾患などでも生じる。
この口腔乾燥症状は、口腔乾燥症状は、口腔の乾燥感だけではなく、口腔の違和感や義歯不適合など様々な状態を含んでおり、原因や誘因とともにその対応も様々だ。
唾液は、三大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)と小唾液腺(口蓋腺、口唇腺など)から分泌、分泌量は、1.0~1.5l/日とされている。成分は、水分が99.5%、残りが無機質を主とする固形分だ。性状は、耳下腺は漿液性で、舌下腺が粘液性、顎下腺が混合型である。唾液は抗菌物質や保湿成分、免疫成分などを含み、消化作用や粘液保護作用、口腔環境の維持として重要な役割を担っている。
一般に、口腔乾燥症は唾液量の低下で生じ、シェーングレン症候群、頭頸部の放射線治療、移植片対宿主病(GVHD)、糖尿病、など多彩な全身症状もみられる。例えば、脱水症状も体液の減少から唾液腺細胞より分泌される唾液量が減少して唾液分泌量低下を来しやすくなる。また、咀嚼機能低下して咬筋などの刺激がなくなることで刺激時唾液も減少。
さらに、唾液腺への放射線照射による障害、唾液腺の外科的侵襲により、唾液腺細胞への直接のダメージや分泌抑制作用による分泌低下見られる。口呼吸や開口状態の患者では、唾液量が正常範囲でも口腔乾燥が生じやすくなる場合がある。特に舌背部や口蓋部が乾燥すると自覚症状が強くなる。
また、経口摂取していない患者では、唾液腺への刺激が低下することで口腔乾燥を呈しやすくなることが知られている。
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