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2022年12月19日 (月)

Science 認知症と口腔機能 ⑥

続き:

2)分析疫学

 分析疫学は、病気の頻度やその分析に影響する因子を統計学的に分析する研究で、集団における全体像をデータで把握することができる。認知症・認知機能・軽度認知症 (MCI) と口腔機能に関連性を調べた疫学調査ついてはコフォート研究と横断研究が報告されている。

 しかし、横断研究では因果関係を明らかにすることができず、それらの論文を対象としたシステマティックレビューやメタ解析では、口腔機能が認知症・認知機能の危険因子であるとの結論は見い出せていない。

 一方で、これまでは欧米中心の疫学調査が多かったのに対して、最近では日本人を対象とした大型の前向きコフォート研究がいくつか報告され始めている。人種差は、食習慣や栄養状態及び一般的な身体状態も大きく異なるため、日本人を対象とした疫学調査が私たちの日常臨床において有益なエビデンスとなることは言うまでもない。ここでは代表的な 3 つのプロジェクトにういて紹介する。

 1つ目は、愛知老年学的評価研究プロジェクトで、4425人を対象にした 4年間の前向きコフォート研究だ。本調査では、①歯がほとんどなく義歯を使用しない者認知症の発症リスクが高いことや、②歯がほとんどなくても、義歯の使用により、認知症のリスクは 20 歯以上の有歯顎者とほぼ同等であることが報告されている。口腔機能および義歯使用の重要性を唱えるエビデンスとして多くの場面で引用されている。

 2 つ目は、大阪大学と東京都健康長寿医療センター研究所が中心となって実施している健康長寿調査、いわゆる SONIC 研究である。複数の地域に在住の70歳、80歳、90歳、そして100歳という幅広い年齢層を対象としているのがこのプロジェクトの特徴で、これまで約3000名が参加している。その中で、咬合力は、認知機能と直接関係していることや、臼歯部サポートの欠如は認知機能の減退に影響していることが報告されている。

 3 つ目は、大都市部在住高齢者に対して東京歯科大学と東京都健康長寿医療センター研究所が行った高島平スタディであり、1118人の70歳以上の高齢者を対象にした横断研究である。ここでは、咀嚼機能と認知機能には関連性があることが報告されている。

 このように日本人を対象とした大規模な分析疫学では、口腔機能(咀嚼咬合力)と認知機能との関連性を示唆する。

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