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2022年12月25日 (日)

Science 認知症と口腔機能 ⑧

続き:

4)介入研究

 症例報告や分析疫学との因果関係が推理された要因(今回は口腔機能)について、これを認知症の予防や症状の改善にゆうこうであるかいなかを証明するには、実際の認知症患者に対して口腔機能の介入を行い、一定期間観察しながら疾病の増減を実験的に確かめる必要がある。しかしながら、認知症患者を被験対象とし、一定観察するのは、サンプリングの問題や倫理的にも難しく、これまでの報告の多くは、健常者を対象とした研究が多い。

 また、それに伴いランダム化比較試験もほとんど見受けられず、その多くは前後比較研究であった。 Hirano らは、健常者に対して、ガム咀嚼前後に作業記憶のテストを行った際の正答率とその時の脳活動を機能的磁気共鳴画像解析(fMRI)を用いて比較している。その結果、ガム咀嚼をしないで作業記憶テストを連続して行わせると、正答率および作業記憶を担当している背外側前頭前皮質の活動が低下するのに対して、ガム咀嚼を行うことで、正答率と脳活動は回復・向上することを認めている。また、認知機能の中でも学習・記憶機能ばかりでなく全般性注意(一つのことに集中して、長時間作業できる)や遂行機能(目標を設定し、そのプロセスを計画、効果的に行動する)についても検討している。Nagasima らは、健常者に対して、ガム咀嚼前後に全般性注意・遂行機能のテストを行った際の正答率と反応時間、そしてその時の前頭前野の活動を機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いて比較している。

 その結果、咀嚼介入することにより、全般性注意は短期的に向上し、左右の前頭前野でオキシヘモグロビン活性の一過性の上昇が見られたことを報告している。

 このように健常者においては、口腔機能の介入に一過性の認知機能の改善が認められている。今後は、認知症あるいは軽度認知症障害患者を対象としたランダム化比較試験や長期的な観察研究の報告が望まれている。

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