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2022年12月14日 (水)

Science 認知症と口腔機能 ③

続き:

2. 認知症治療薬と先制的予防介入

 認知症に対する治療や予防法の開発は、日本のみならず世界的にも喫緊の課題となっている。アセチルコリン(ACH) 分解酵素である ACH エステラーゼを競合阻害することにより、ACH の分解を減らし ACH 神経伝達効率をあげるドネペジル(商品名:アリセプト)は、アルツハイマー型認知症治療薬の先駆けとして1999年の登場以来、治療にパラダイムシフトをもたらしつつ、今日も基本的治療薬として位置づけられている(その後、レビー小体型認知症の認知症症状への適応も拡大)。2011年にはガランタミン(レミニール)、メマンチン(メマリー)、リバスチグミン(リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ:貼付剤)が抗アルツハイマー型認知症治療薬として順次承認された。なお、メマンチンのみNMDA 受容体拮抗薬であり、他の3薬剤とは機序が異なる。

 いずれにせよ、治療選択肢が増えたことで、症状に応じた薬剤の使い分けが可能で、より効率的な認知症性疾患治療への取り組みが可能となったわけだが、これらはあくまでもアルツハイマー病に伴う認知症症状(認知機能障害および認知症に伴う心理および症状の緩和を目的とした対症療法薬に過ぎない。アルツハイマー病の本質的な治療薬を、変性脱落した神経細胞を復活させ、障害された認知機能を元の状態へ回復させる作用を持つ薬剤と定義すると、その定義には全く該当せず、効果は限定的と言わざるを得ない。

 おのような状況の中、近年、疾患メカニズムに即した治療法いわゆる疾患修飾法 (disease-modifying therapies : DMT) の臨床開発が急に進んでおり、「アデュカヌマブ」に期待が寄せられている。

 その効果は、 Amylod-PET 検査にて脳内の A βの蓄積の減少確認され、金銭管理や家事(掃除、買い物、洗濯等)といった手段的日常生活動作(IADL) の改善の報告あり。元々は、2021/06/13、に米食品医薬品局(FDA) の承認を受け、わが国では2022年に実用予定であったが、厚労省は現状のデータからでは疾患治療薬としての有効性の判断が困難だとし、いまだ日本での販売承認には至っていない。

 因みにアデュカヌマブの投与法は注射(静脈注射)で、今後、認可されたとしても年間 28200 ドル(350 万円)の治療費負担が生じる。一方、同じ Biogen/Eisai により創薬され、遅れて治験が開始となった「レカネマブ」は、primary end -point を達成、この秋には米国で、その後順次 EU,日本と、治療薬としての承認が期待されている。

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