Science 歯周病と認知症 ⑤
続き:
3) 歯周病とアルツハイマー病
アルツハイマー病は、老年期に発症し、緩徐に進行し、記憶障害を主症状とし、病態として老人斑(アミロイドβと呼ばれるタンパク質の樊城蓄積)が脳神経細胞外に沈着することや、高リン酸化したタウタンパク質(神経軸索機能の維持に必須なタンパク質)の神経原線維変化を特徴とする。アルツハイマー病患者の中枢神経系では炎症反応の亢進が認められ、それがアルツハイマー病の病態形成に重要であると考えられている。
アルツハイマー病案者の脳において、サイトカインなどの炎症性物質が増加していること、アミロイドβがマクロファージなどによる炎症反応を惹起することなどがその根拠いなっている。
歯周病は、プラーク中の細菌による感染とそれによる生体の防御反応である炎症・免役反応により発症・進行する慢性炎症性疾患であり、歯周組織において持続する慢性炎症によって産生された炎症性サイトカインなどが、血流を介し全身に広がり影響を及ぼすことで、全身性の炎症が認知機能の低下、アルツハイマー病発症のリスクを増大させる可能性が示唆されている。
また、アルツハイマー病患者の剖検脳から多くの細菌が検出され、歯周病原細菌である Tannerella forsythia, Porphyromonas gingivalis が10例中 3例で確認されている。また、Treponema 属性の菌が三叉神経節、脳幹、大脳皮質などで検出された報告もある。
これらのことは、歯周病原細菌が血流などを介して脳神経系に直接伝播する可能性を示している。アルツハイマー病モデルマウスの口腔内に直接 P.gingivalis を投与したマウスは、非投与群と比較し認知機能が著しく低下したと報告がある。さらにその脳を解析した結果、アミロイドβの沈着量の増加、 TNF- α などの炎症性サイトカインの産生量の増加、りぽたとうるい(LPS)濃度の上昇が認められ、アルツハイマー病の病態の悪化が示された。
これらのことから、歯周病原細菌が直接または間接的に、アルツハイマー病の病態に影響を与えることが示されている。
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