Clinical 正確で効率的な歯科総合診断 ③
続き:
3. パターン認識法弱点
スナップ診断のような経験則で意思決定する思考は、心理学ではヒューリスティックと呼ばれる。ヒューリスティックは、ヒトの進化の過程で即座に意思決定しなければならない状況に適応するため発達させた能力とされているが、効率的な反面認知バイアスによる誤謬を招きやすいことが知られる。
★ 症例1 15歳、女性。 主訴:左上歯茎が晴れて硬いものを噛んだ時に痛む
近歯科医院にて 〇口腔内写真 〇デンタルX線画像 〇口腔内所見➡ 左側上7番感染根幹治療を行うも口蓋側の瘻孔が消失せず、難治性尖
性歯周炎との判断のもと本院紹介となった。 X線画像にて瘻孔から挿入したガッタパーチャポイント先端は隣在歯左側上6番の口蓋根根尖付に
到達しており、同歯の慢性根尖性歯周炎に診断変更となった。
★ 症例2 67歳、女性。 主訴:左下歯茎の腫れと痛みがひかない
近歯科医院にて 慢性歯周炎の治療行うが左下4番の症状が消失せず、難治性の慢性歯周炎の診断のもと本院紹介となった。 X線画像にて瘻孔
ら挿入した ガッタパーチャポイント先端は同歯根尖に到達しており、根尖周囲歯槽骨の透過性充進を射止めたため、慢性根尖性歯周炎に診断
変更となった。
★ 症例3 67歳、女性。 主訴:4か月から歯が痛い
右下臼歯部の痛みが4か月続き、近歯科医院にて受診するが原因不明。本院の検査でも、歯痛、顕著な腫れ、出血を認めない。右下67歯間部
の歯肉形態が不整で接触痛があったことからブラシの使い方を指導したところ、歯肉形態と接触痛は治癒した。
典型例を当てはめて判断する思考法を代表性 ヒューリスティックと呼ぶが、以上の3症例は代表性ヒュウリスティックを用いたゆえの誤診と考える。ところで、礪波は症例3の治療的診断が奏功したことが成功体験となり、その後所見が伴わない歯痛に遭遇すると、非歯原性疼痛と合わせてブラッシングの擦過創を疑うことが続いている。これは記憶に残っている経験を優先的に当てはめて考える利用可能性ヒューリスティックと言われるものであるが、例外的な経験則を過剰に高い評価して頻回利用していると、やはり誤診の原因だ。
一方、パターン認識法の誤診リスクを高めるのは、歯科医師のヒューマンリスティック的思考だけではない。
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