« Clinical 正確で効率的な歯科総合診断 ⑤ | トップページ | Clinical 正確で効率的な歯科総合診断 ⑦ »

2023年2月18日 (土)

Clinical 正確で効率的な歯科総合診断 ⑥

続き:

5. フレーム問題と物語的思考 

 戦術の議論を踏まえ、2つの診断法においてどのステップでシステム 1 、システム 2 の思考が行なわれるか整理したもの<症例4> 72歳、女性。主訴:右顎痛みがとまらない ★パノラマx線画像 ★デンタルX線画像 ★右下 6番頬側面 ★右下 6番舌側面、★口腔内所見 右側耳孔から右下臼歯部まで広範囲の痛みを訴え、近所歯科医で右側顎関節症を疑い本院紹介に至った。右下 6番の打診痛が顕著であったため、電気的歯髄診断を行ったところ失活歯であることが判明し、同歯の慢性根尖性歯周炎の診断。

 どちらも診断の初期(パターン認識法では第一候補となる疾患の想起、仮説演繹法では診断リストの想起)にシステム1により診断の検討範囲を限定する点で共通。「この範囲で考えましょう」という思考範囲の初期設定は Frame of reference (参照枠)として知られ、意思決定の情報処理に必須のプロセスとされる。

 例、AI研究において「フレーム問題」といわれるものがある。これは、AIが何かを判断をするとき、考えるべき情報の参照枠を AI自身が決定することができないという問題だ。将棋の AIは盤面のどこからどこまで考えるべきか、何手先まで読むべきか等、与えられた参照枠中の情報を活用して最適解を計算することに長けている。しかし、その参照枠自体の決定は事前に人間が行われなければならない。参照枠決定を含め、すべて AIにやらせようとすると、参照枠決定の計算に必要な情報の参照枠決定、そのための参照枠決定……という無限ループに陥りフリーズしてしまうのである。

 AIが有限の情報処理能力しか持たないために生じる問題であるが、同じく有限の情報処理能力しか持たない人間は、フレーム問題なしに臨機応変に参照枠を設定する。この違いについて、久保は AIが数値的・倫理的思考しかできないのに対し、人間は物語的思考ができることを理由としている。つまり、人間はすべての可能性を検証せず、前後の文脈から適当に参照枠を選択しており、そのためフリーズしないで済んでいるということになる・

 

« Clinical 正確で効率的な歯科総合診断 ⑤ | トップページ | Clinical 正確で効率的な歯科総合診断 ⑦ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事