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2023年4月14日 (金)

Science 嚙みしめと運動の関係~遠隔促通の正しい理解~ ⑤

続き:

前述のように、遠隔促通はあらゆる筋の組み合わせで生じうるものである。運動時の複数の筋の活動について考える時、ある程度持続的な筋活動であれば活動開始の順番がどうあれ互いに促通し合っていると考えることができるが、運動開始時において咬筋の活動が他の筋の活動を促通しているのか、それとも他の筋の強い活動によって咬筋活動が促通されるのかは筋活動が開始する順番が重要となる。スクラム時の強い咬筋活動が他の筋より先行して活動を始めていることは、この咬筋の筋活動がスクラムの押し始めから遠隔筋として下肢の筋の活動の活動を促通に関与していることを意味していると考えられる。

 スクラム時の嚙みしめが、下肢の筋に対し遠隔促通を引き起こしている可能性が高いということをふまえて、MG 装着による口腔への介入を行う実験を行った。MG は通法に従い、石膏模型上で 3.8 mm 酢酸ビニールシートを軟化圧接して、咬合器上で第一大臼歯部の厚さ約 2.5 mm に咬合調整を行った。 MG 装着により咬筋筋電図活動はピーク値と面積値が有意に増加した。

 胸鎖乳突筋と広背筋に顕著な変化はないものの、外側広筋とヒラメ筋にはピーク以外で有意な筋活動の増加が見られ、スクラム力もすべての項目で増加がみられた。このような結果は、スクラムをする際に嚙みしめを行う選手については調整されてカスタムメイド MG の装着によりスクラム力が向上する可能性があることを示しており、少なくとも MG の装着がパフォーマンスに対してマイナスに作用すると言える。

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