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2023年4月 7日 (金)

Science 嚙みしめと運動の関係 ~遠隔促通の正しい理解~ ②

続き:

1. 遠隔促通とは

 遠隔促通とは、ある筋の活動性が離れた別の筋(遠隔筋)の強い収縮によって高められる現象である。ハンガリーの医師 Erno" Jendrassik により、歯を喰いしばりながら両手の指を互いにひっかけて強く引っ張り合う動作(Jendrassik maneuver:ジェンドラシック手技)➡嚙みしめながら両手の指を互いにひっかけて強く引っ張り合う動作をすると膝蓋腱反射が出やすくなる。作用があるとして最初に報告された。ただし、この時は被験者の注意を手の引っ張り合いに向けて脚から注意をそらす効果に注目されており、運動ニューロンの活動性など詳細な変化やその機序まで明らかにされたわけではない。

 Delwaide らは、ジェンドラシック手技の代わりに手首を伸展(背屈)させる動作を遠隔筋の収縮として、膝蓋腱反射と同様に H 反射の振幅を促通させることを示し、遠隔筋の収縮が他の筋運動ニューロンの活動性を高めている可能性を示した。

 H 反射とは、膝窩部から脛骨神経に電気刺激を加えた場合、脛骨神経内の運動ニューロンの軸索が刺激されることによりヒラメ筋に誘発される筋電図活動(H 波)の 2 つの波形が記録される現象で、➡膝窩部から脛骨神経への電気刺激を行いヒラメ筋の筋電図を記録すると、運動ニューロンが刺激された結果生じる M 波と、感覚ニューロンの刺激により生じた興奮が脊髄を経由して運動ニューロンに伝えられ生じる H波の 2つの筋電図波形が記録される。遠隔筋強い収縮は H波形の振幅のみ増加させる。

 それで、 H 波の経路は膝蓋腱反射などの伸張反射と同様のものである。遠隔筋の収縮により H 波の振幅のみが増加するのは、遠隔筋の収縮で、脊髄内の運動ニューロンの活動性が変化している可能性を示唆する。

 H 反射を利用した遠隔促通に関する研究は、上肢の筋を遠隔筋とした下肢の筋への促通だけでなく、様々な部位の筋の組み合わせでも報告されている。それで、普遍性の高い現象。

 また、観察や定量的な評価がしやすいことから実験的には H反射を利用が多い、遠隔筋の収縮は随意的な筋収縮力(特に等尺性収縮)も増加することが確認されている。

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