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2023年4月17日 (月)

Science 嚙みしめと運動の関係 ~遠隔促通の正しい理解~ ⑦

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意図的に強い嚙みしめを行う場合、数十秒かけて行う弓を引く動作の多く間、咬筋から上肢・体幹という方向と上肢・体幹から咬筋よいう方向の双方向に遠隔促通は働いているものと考えられる。しかし、僧帽筋や上腕三頭筋といった弓を引くのに主要な働きをする筋の活動量は弓の強さに規定されると考えられるので、同じ弓を同じ意見社が引けば、嚙みしめをしたからといって筋活動量が増加するわけではない。しかし、被験者に嚙みしめながら弓を引いた場合の感想を聞くと、楽に引けるようになったような気がするという者も何名かおり、少なくとも弓を引く動作に関しては嚙みしめが悪影響を及ぼすことはなさそうである。

 弓を引く動作に続いて行なわれる「離れ」では、すばやい動作が行なわれる。矢たた距離がの発射のために右手の指が動いた瞬間からその0.1秒後までの区間で左手および右手親指の付け根が動いた距離を計測し速度を算出した。離れの0.1秒後の写真を比較すると、嚙みしめをしない時のほうが左右とも手の動いた距離が嚙みしめた時よりも大きく、肘の開き具合も嚙みしめない時のほうが大きく開いているのが分かる。(写真 略)。

 手の運動速度は弓手が非嚙みしめ時に 0.25 m/s 、嚙みしめ時に 0.20 m/s、馬手は非嚙みしめ時に 1.89 m/s、嚙みしめ時に 1.46 m/sで、いずれも嚙みしめ時に運動速度が有意に減少した。

 弓道における離れの良し悪しは手の動く速さのみで評価されるものではなく、一般的に鋭い離れが良いとsれている。それで、速度の減少はネガティブな影響であると考えて良いはずである。この速度の減少は嚙みしめに伴う遠隔促通の結果、非相反性の促通や Ia 抑制の減弱により、すばやい運きにブレーキがかかってしまったものと考えられる。

 強い力を出すときに嚙みしめる習慣のある人であっても、実際には競技中常に嚙みしめ続けているわけではなく、連続的な運動の中で嚙んだりやめたりしていることが多い。今回の弓道の実験では分かりやすく嚙みしめの効果を評価するために意識的に弓を引くときから離し終わるまで強く嚙み続けたが、例えば引くときには嚙みしめ、離すときには嚙むのをやめるとか、全力で嚙みしめるのではなく、軽く嚙むなどの条件を変えることによって、嚙むことのメリットを最小限に抑えることができるかもしれない。いずれにしても、運動のパフォーマンスを上げるために、嚙みしめを応用する方法に関しては競技の種類や運動の性質をより個別に検討することである。

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