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2023年5月16日 (火)

人間と科学 第346回 歴史散歩 医学の目 リーダーたちが病気になった時(1) 1

小長谷 正明(国立病院機構鈴鹿病院名誉院長)さんの文をコピーペー:コピーペー:

ワシントン大統領の義歯と急性呼吸不全 

 王様や大統領もヒトであるので、医学的トラブル、つまり病気になり、それが歴史に影を投げかける。重篤な場合は、当事者能力やカリスマ性を失い、社会が動揺する。しかし、時にはポジティブな結果をもたらすこともある。

 

 今から 1/3 世紀ほど前、小長谷はアメリカ東部の大学で研究し始めた時、先にいた留学生から、「銃で脅かされたらすぐに渡せるように、20 ドル札を胸ポケットに入れておけ」とアドバイスされた。20 ドル札の顔は馴染みのない大統領で、初代ジョージ・ワシントンの渋面のほうがお守りになるのにと思った。彼は 1 ドルで、薄い唇を食いしばっていて、気難しげなお爺さんだ。義歯のトラブルで、おんな顔つきになっていたらしい。

 彼は若い頃から歯が悪く、28 歳で初めて義歯のお世話になり、1789 年、57歳の大統領就任時には、自歯は1本だけだった。生涯に 7回も義歯を作り、5セットが残存している。初代大統領の義歯ともなるとゴミ扱いされず、国立歯科博物館(米国東部にあるメリーランド大学歯学部に併設)や彼の農場があったマウント・バーノンの博物館に飾られている。

 当時の義歯材料はカバなどの動物の歯だけではなく、人の歯も使われていた。『レミゼラブル』のコゼットの母親も生活に困って前歯を金に換えているし、ワシントンも Negros (黒人)宛の 9本の歯の支払い記録が残っている。当時の相場の3 割程度で、自分の農場の黒人奴隷から抜歯したらしい。

 ワシントンは歯科医師への手紙で、「義歯は幅があり過ぎて、支持部分が出っ張っている。そのため、上唇も下唇も腫れたように飛び出している」と訴えており、作り直した別の義歯については、「唇を鼻の真下まで突き上げる作用がある」とも。

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