人間と科学 第346回 歴史散歩 医学の目 リーダーたちが病気になった時(1) ④
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こうしてジョージ・ワシントンは急逝した。喉の痛みや発生障害があることから咽頭・喉頭部の重篤な炎症による腫脹で上気道閉塞を来したのだ。長年にわたる義歯トラブルによる口腔内不衛生からの炎症が原因なのは想像に難くない。
彼の死期を早めた瀉血は、昔の西洋医学では、治療と称して行なわれていた。古典的医学理論では、病気は血液、粘液、黄色胆汁、黒胆汁の 4 種類の体液のアンバランスが原因で、血を抜いてバランスを整えるのだという。また、皮膚に豆班猫(カンタリジン)などの刺激性の物質で水疱を作り、陰圧をかけて、体内の毒素を吸い出す治療もなされていた。
ワシントンの死から数十年後の 19 c. 半ば、フランスでの調査で、瀉血は体力を弱ら出血死をもたらすことが明らかになり、以後、廃れてしまった。江戸時代末期に西洋医学が日本に取り入れられたが、幸いにも瀉血は普及しなかった。現在では多血症などの特殊なケース以外はまず行なわれない。
こうしてアメリカ建国直後の初代大統領ジョージ・ワシントンは、義歯トラブルが原因にせよ、キッパリと辞任し、その 2 年後にはこの世からも退場したので、後世に潔い印象を残した。以降、第二次世界大戦期に 4 選されたフランクリン・ルーズベルト以外は、大統領は 2 期 8 年までしか努めていない。
彼は、”建国の父”として伝説的存在となったが、一方で、今日的な意味ではリベラルとは言い難い。農場で黒人奴隷を使い、義歯用に歯を抜かせ、大統領在任中には、インディアン(アメリカ先住民)はオオカミと同じで開拓の邪魔だと、撲滅政策を推進していた。
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