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2023年6月 2日 (金)

人間と科学 第347 回 歴史散歩 医学の眼 リーダーたちが病気になった時(2) ③

続き:

まさに究極のパワハラ・セクハラで、古代エジプトでも、厳しく断罪された。4 人がゆうざいになり、一人が自殺し、命を助けられた 3人は、後世への見せしめに鼻や耳をそぎ落とされた。

 古代エジプトといえばミイラだ。ラメセス 3 世のミイラは保存状態が良く、樹脂を浸した包帯できっちりと巻かれた胴体の上にがっしりした顔の頭部が載っている。外見上異常はなく、陰謀団は”邪悪な蛇や蛇たちの王”と呼ばれたので、ヘビ毒による毒殺が疑われてきた。また、パピルスの記述はラメセス 3 世が裁判開始を主導したとも読み取れるので、暗殺事件直後には生存しており、間もなく死亡したと考えられてきた。

 ヘビ毒では即死しないのだ。ところが近年、高性能 CT でミイラの画像を 3D 化したところ、固く巻かれた首の包帯の下に切傷 があり、傷口は 7cm で脊椎に達し、気管や食道、頸動脈などの太い血管の切断が明らかになった。間違いなく即死だ。

 おそらく、現場にいた家来たちがすぐさま暗殺者を拘束し、陰謀を鎮圧したのだ。ただちに王妃の王子がラメセス 4 世として即位し、裁判を行い、”邪悪な蛇ども”を断罪したはずだ。

 

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