人間と科学 第347回 歴史散歩 医学の眼 リーダーたちが病気になった時(2) ④
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一方、古代エジプト新王朝時代の高貴な人物を葬るはずの王家の谷に隣接した墓所で、立派な装身具をまといながらも苦悶の表情で手足を革ヒモで縛られ、雑に作られた青年のミイラが見つかった。当時は忌み嫌われていたヤギの皮で覆われている。不祥事で、毒殺されたか、生きたまま柩に入れられたかした高貴な青年と推測されてきた。
かのツタンカーメンが若くして亡くなった後に、残された妃が夫を迎えようとして幾重不明になったヒッタイト国の王子であるいう説や、後継者争いに敗れた別の王子とも言われてきた。しかし、手がかりとなる副葬品はなく、柩にもなんの記録も残されておらず、Unknown E と呼ばれ、長らく謎の人物とされてきた。
近代の法医学的捜査手法といえば DNA 鑑定である。ラメセス 3 世と Unknown E のミイラの DNA が調べられた。果たして二人のY 染色体の DNA 配列は一致していた。Y 染色体は男性の細胞にだけあり、祖父から父、父から息子と、男系飲みに伝わっていく。
前後の事情からして、ほぼ確実に Unknown E はラメセス 3 世の息子ペンタウラーであり、パピルスのミステリーは時空を超えて解決した。
ラメセス 3 世は最後の偉大なるファラオと言われていたが、彼の暗殺以降、古代エジプトの王国は衰退していった。
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