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2023年7月28日 (金)

Topics 抗菌薬が使えなくなる日 ②

続き:

2. 広域抗菌薬の長期使用と MRSA 腸炎

 新規抗菌薬が各社から相次いで上市されていた 1980年代の我が国では、手術の際に広域の予防抗菌薬を 1週間以上投与することが一般的であった。加えて大腸外科手術では術前に経口抗菌薬を 3日間使用することもあった。このような広域抗菌薬の長期間投与が一原因となり、1990年頃にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) 陽炎が多発した。術後数日で突然多量の胃管排液と水様下痢を来たし、ショックと急性呼吸窮迫症候群(ARDS) に伴う呼吸不全を併発した。

 MRSAは医療従事者や病院環境を介して他の患者に伝播したため、「院内感染」という言葉がメディアで報じられたのもこの頃である。

 抗菌薬使用方法の見直しを目的として、1994年の第 43回日本消化器外科学会総会において、「消化器外科における抗生剤の使用法をめぐって」と題するシンポジウムが開催された。シンポジウムに先立って実施された全国 309 施設を対象としたアンケート調査では、結腸手術での予防抗菌薬期間は 59.1%が 6日以上であった。本シンポジウムでは MRSA 多発の反省から抗菌薬の使用方法を見直すことを結論づけ、予防抗菌薬は狭域のものを 4日程度に抑えることとした。

 抗菌薬使用方法の改善を受け、MRSA 腸炎の流行は 1996年頃までで収束したが、抗菌薬投与期間短縮の流れは続いた。1999 年に発表された米国疾病予防管理センター(CDC) の手術部位感染予防のためのガイドラインは、さらなる短縮化に大きな影響を与えたと考えている。

 2000年以降、多くの術式で予防抗菌薬の投与期間は 1、2日となった。

 このように 1990年からの約10年間で、周術期の抗菌薬使用量は大幅に減少したのである。

 

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