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2023年8月18日 (金)

人間と科学 第349回 歴史散歩 医学の眼 リーダーたちが病気になった時(4) ②

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 この症状は運動性失語症と右の片麻痺であり、言語中枢と右半身の運動中枢がある左の大脳に起こった血管障害が原 年に因だ。ゲーテの母方の祖父の症状を参考にしたという。

 歴史上にも、失語症になった政治リーダーがいるが、トップが思いを口にできないことは、深刻な政治的余波を残すことになる。

 人気テレビ番組『暴れん坊将軍』のモデル、8代将軍徳川吉宗は 1745 年に隠居して大御所となったが、大御所時代のことは幕府正史の徳川実紀にほとんど書かれていない。実は、脳血管障害で失語症となり、介護を受けていたのだ。

 吉宗は大御所となった翌年に脳卒中を発症し、側近の小笠原政登が残した『吉宗公御一代記』によると、「御言舌御もとおりかね、御右の方御手足御叶わざるなり」とのこと。

 つまり、右片麻痺と言語障害である。しきりになにかを話されるのだが、御意が聞き取れない。鷹狩りが大好きだったことから「御鷹野の儀ござ候や」と側近が問うと、「おのことじゃ」と答えられた。意味のある言葉は喋れないが、側近の問いかけを理解して、簡単な言葉で反応するので、典型的な運動性失語だと診断できる。発症 3 年後でも言語不明瞭なままで、小笠原は「言葉は出来かね、ドモリ候ようなる」と書き記している。先の将軍なので、介助のために 10 人ほどの小姓うき、手厚い介護やリハビリを受け、バリアフリー化された御殿で療養していたが、5 年後の 1751 年に 68 歳で崩御した。

 

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