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2023年8月28日 (月)

Science 歯科医療の未来を切り拓くエピジェネティクス ①

波多 健司(大阪大学大学院歯学研究科生化学講座准教授)さん及び西村 理行(大阪大学大学院歯学研究科生化学講座教授)さんの小論文の共著を載せる。

コピーペー:

はじめに

 日々の臨床において歯科医師は様々な症例に遭遇する。同じような年齢、性別、生活習慣なのに歯周病の症状に差がある、同じ治療を行ったhずなのに治療効果が異なるといったことを経験した読者は多いはずである。

 私たちの口腔内はエナメル質、象牙質および骨など多種多様な細胞群から構成されている。これらの細胞は1つの受精卵から発生し、同一ゲノム DNA を持つにもかかわらず、それぞれ全く異なる形態と機能を有している。このような「個性」ともいうべき生物学的多様性は、DNAの塩基配列に依存する「遺伝子」と、口腔衛生状態や食習慣といった「環境」によって説明できる。

 「遺伝子」はアデニン(A)、チミン(T)、グアニン (G)、シトシン(C)の 4 種類の塩基の配列からなる遺伝情報であり、塩基配列の変化は遺伝子の機能を阻害(または活性化)することで疾患を引き起こす。一方、「環境」も短期的および長期的に「遺伝子」の働きを変化させることで疾患を引き起こす。しかし、「環境」は DNA 塩基配列の変化を引き起こさないケースがほとんどであり、なぜ「環境」が塩基配列を変化させることなく遺伝子の働きをコントロールできるのか、これまで多くの謎に包まれていた。

 20c. 後半になって次世代シークエンサーをはじめとする DNA 解析技術が急速に発展した。そして、「遺伝子」と「環境」をつなぐ新しいメカニズムとして「エピジェネティクス」と呼ばれる生命機構が明らかになった。エピジェネティクスは、DNA 塩基配列を変化させることなく遺伝子の働きを調節することで生命の多様性を生む生物学的プログラムであり、ほぼすべての生命現象に関わる重要な分子基盤である。そして、エピジェネティクスの変化が原因となって生命現象の調節機構が破綻し、様々な疾患を引き起こすことも明らかになった。

 ここでは、比較的新しい概念であるエピジェネティクスについて、概説し、歯科臨床への応用も含めた将来的な展望についても述べる。

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