« Topics 抗菌薬が使えなくなる日 ④ | トップページ | Topics 抗菌薬が使えなくなる日 ⑥   »

2023年8月 7日 (月)

Topics 抗菌薬が使えなくなる日 ⑤

続き:

5. 綱渡りのキードラッグ供給

 1980ねんだいまで製薬企業が競って新規抗菌薬の開発を行っていた頃は、高薬価で、しかも医師が長期間使用したため、大きな利益につながった。抗菌薬適正使用により使用量が低下し、ジェネリック政策により薬価が下がり続けたことで、ジェネリックメーカーでさえ採算が取れないようになった今、キードラッグの供給不安が医療に影響を及ぼしている。

 最も大きな問題は、キードラッグの原料を海外の特定の国に依存している点である。レアアースの禁輸が想起されるように、何らかの理由で抗菌薬原料の輸出が止まる、もしくは大幅な値上げが起きればどうなるだろうか。国内でキードラッグの流通が止まれば、予防抗菌薬なしで手術、術後の感染症ではドレナージのみ、肺炎が起きたら祈るのみ。ペニシリン登場以前の医療と何ら変わりがない。

 日本感染学会など感染症関連 4 学会では、2019年に厚労大臣に対して「抗菌薬の安定供給に向けた 4学会の提言 -生命を守る薬剤を安心して使えるように-」をまとめた。原料の海外への依存はリスク管理の観点から望ましくなく、国内生産能力を持つべきとの内容である。また10種類のキードラッグを挙げて、それらの抗菌薬なしに医療が成り立たないことを訴えた。

 2020年3月には厚労省で医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議が立ち上がり、最も優先した取り組みを行うべき医薬品として 21品目を挙げ、そのうち6品目が抗菌薬であった。抗菌薬を中心に述べているが、キードラッグの供給問題は感染症領域以外でも存在する。

 国内生産に向けた取り組みも始まった。2020年度の補正予算では、海外依存度の高い抗菌薬原料・原薬の国内生産設備の 50%を補助するために30億円(10億円×3社)が計上された。生産設備の建設と維持に数百億円を要する。1社あたり10億円の補助は微々たるものかもしれない。

« Topics 抗菌薬が使えなくなる日 ④ | トップページ | Topics 抗菌薬が使えなくなる日 ⑥   »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事