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2023年8月11日 (金)

Topics 抗菌薬が使えなくなる日 ⑦

続き:

7. それでも危機は続く

 

 キードラッグの安定供給と新薬開発のいずれも、国を挙げて取り組んでいるように読み取れたかもしれない。両者に共通した課題があることに気づいただろうか。国内生産企業への補助は数百億の必要経費の内10億円、プル型インセンティブについては「導入を検討する」、いずれもごくわずかの前進か、まだ一歩目を踏み出していない階段である。キードラッグの安定供給も新薬開発も多額の財源を要する点がハードルになっている。

 新型ウィルスのワクチンに数兆円を投じたのに対し、なぜこのような重要な問題に財源がないのだろうか。その鍵は世論にある。2021年に日本医療政策機構が世論調査を行った。「新薬開発に保険料の追加負担はどの程度許容できますか?」との問に、「追加負担したくない」が41.7%と最も多く、「1人当たり年間20円」が13.3%、「同80円」が9,5%であった。「1年間300円以上負担しても良い」は19.0%と少数派である。すなわち薬剤耐性菌や新薬の開発停滞に問題意識を持つ人が非常に少ないことを意味している。世論の支持がなければ政府は予算を割くことができない。

 世論だけではない。我々医療従事者のうち、本稿で述べたキードラッグの海外への過度の依存や新薬開発の問題を知る人がどの程度いるのだろうか。病院の感染制御チームメンバーでさえ、この問題に対する危機感が薄い人が少なくないと考える。

 今我々に必要なのは、抗菌薬が使えなくなる日がいつ来てもおかしくないことを知り、その危機感を発信していくことである。医療従事者が訴えて初めて世論を動かすことができる。世論が変わらなければ予算は出ないし、目の前の問題は解決しないのである。

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