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2023年9月 8日 (金)

Science 歯科医療の未来を切り拓くエピジェネティクス ⑧

続き:

お わ り 

 近年の技術革新により、これまでにないレベルでのゲノム解析が可能となり、エピジェネティクスの解析も急速に進展した。ここで紹介できなかったが、三毛猫のほとんどがメスであるのもエピジェネティクスである。また、がん以外にも老化や精神・神経系疾患、さらにはアレルギー・自己免疫疾患においてもエピジェネティクスの関与が報告されている。

 がん治療分野ではエピジェネティクスを対象とした治療薬が実際の臨床で使用されておで、でもり、今後は歯科医療への応用も期待される。例えば、DNA メチル化解析による口腔がんのリスク評価である。口腔粘膜や歯肉の一部を採取し、がん遺伝子またはがん抑制遺伝子の DNA メチル化を総合的に評価することで、前がん病変や悪性度のリスク診断が行える可能性がある。実際、北海道医療大学歯学部の泰彦善裕教授らの研究グループは、口腔前がん病変において、がん抑制遺伝子が高度にメチル化していることを報告している。将来的にはリキッドバイオプシーでのエピゲノム診断が可能になるかもしれない。そして、DNA メチル化阻害剤によりがん抑制遺伝子のメチル化を解除することが可能になれば、口腔がんの治療薬としての期待がもいぇる。

 さらに、口腔組織の再生医療へのエピジェネティクスの応用もいくつか報告がある。様々なヒストン脱アセチル化酵素(HDAC) の阻害剤が歯髄細胞による象牙質再生を促進することが報告されており、効果的な覆髄材への応用が期待されている。また、細胞特異的なエピジェネティック修飾薬の開発が可能となれば、象牙質だけでなく骨、軟骨といった組織の再生医療への応用も期待できる。

 飛躍的な解析技術の進歩により、エピジェネティクス研究が今後さらなる発展を遂げることは確実だ。その一方で、DNA メチル化やヒストン修飾などが制御する遺伝子の標的特異性を決定する分子メカニズムは未解決の研究課題である。また、同じ組織内でも 1 細胞レベルでのエピジェネティクス解析を可能にする解析技術の開発が望まれる。

 今後は、最先端の技術を駆使することでエピジェネティクスにより制御される生命現象の理解を深め、得られた知見を歯科医療への応用につなげていきたい。

  

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