Science 糖尿病と歯周病 ~基礎研究からその問題点を考える~ ③
2. 基礎研究見えてくる糖尿病における歯周炎とその発症・進展機序
ストレプトゾトシンによる誘導糖尿病モデルは、ストレプトゾトシンによる膵β細胞の破壊をもとにした 1 型糖尿病モデルである。我々はこの1型糖尿病モデルラットを使用し、上顎右側第二臼歯 (M2)の歯頚部に、できるだけ歯肉に損傷を与えないように縫合用ナイロン糸を全周に巻いて近心口蓋で結ぶようにすることにより、プラークを停滞させ実験的歯肉炎を惹起した。歯周炎惹起 2週間後の歯肉において、糖尿群では非糖尿病群と比較し、著明に炎症性細胞浸潤が増加し、かつ tumor necrosis factor-α(TNF-α)、inducibie nitric oxide synthase(iNOS) といった炎症性サイトカイン発現が有意に増加した。(写真 略)
2型糖尿病モデルである Zucker diabetic fatty ラットでは対照である Zucker lean ラットに比較し、歯槽骨の吸収が大きく、歯肉における遺伝子発現では炎症性サイトカイン発現が亢進し、抗炎症性サイトカイン発現が減少していることが明らかとなった。動物実験においては、1型糖尿病、2型糖尿病、共に糖尿病の存在が歯周炎を増悪させることは明らか。
一方で、1型糖尿病モデルラットに実験的歯周炎を惹起すると同時にインスリン治療を行ったところ、インスリン治療群で歯周炎は有意に改善してり、1型糖尿病モデル対するインスリン治療が歯周炎を改善することも確認された。
さらに歯周炎による iNOS 増加により誘導された過剰な一酸化窒素(nitric oxide:NO ) はニトロ化ストレスを亢進する。しかし、糖尿病において歯周炎では、ニトロ化ストレスがさらに亢進していることが判明した。(写真 略)
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