Science 糖尿病と歯周病 ~基礎研究からその問題点を考える~ ④
成瀬桂子(愛知学院大学歯学部内科学講座主任教授)さんの小論文をコピーペー:4回目。
糖尿病における高血糖が、ミトコンドリアにおける活性酸素(ROS) 産生増加を介してNO 反応し、 peroxynitrite を産生し核内酵素である poly(ADP-ribose) polymerase (PARP)を活性化することにより、糖尿病合併症合併症発症機序と考えられているポリオール活性の亢進、グリケーションの増加、 PKC 活性の異常などを引き起こすという理論は、古くより糖尿病合併症発症・進展機序の一つとして考えられている経路である。
1 型糖尿病モデルラットに対する実験的歯周炎惹起によるニトロ化ストレスの亢進
正常ラットに比較し、1型糖尿病モデルラットの歯周炎ではニトロチロシンの発現が上昇しており、ニトロ化ストレスが亢進していた。
( 図 3 Western blot 画像略)
そこで我々は、糖尿病における歯周炎増悪機序にニトロ化ストレスの活性化による PARP の活性化が関与しているのではないかと考えた。糖尿病ラットに歯周炎を惹起して検討したところ、糖尿病ラットに歯周炎側歯肉では PARP 活性化が最も亢進しており、PARP 阻害薬投与により PARP 活性化が阻害され、歯周炎が改善するすることを見い出した。(図4 略)。
こうした事実は、糖尿病における歯周炎発症・進展機序と、古くより考えられている糖尿病合併症発症・進展機序が、共通の経路を有することを示唆するものであり、糖尿病における歯周病を糖尿病合併症と考えるべき根拠の一つあると考えている。こうした実験結果は PAPR 阻害薬を糖尿病合併症や、糖尿病合併歯周炎の治療薬として使用することを期待させるが、現在 PAPR 阻害薬は抗がん薬として使用されており、副作用に骨髄抑制などが認められるため、残念ながら歯周病や糖尿病合併症には使用できない状況である。
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