Scince 糖尿病と歯周病 ~基礎研究からその問題点を考える~ ⑥
続き: その2
動脈硬化は、血管内皮細胞に接着した単球・マクロファージが動脈内膜に侵入し、そこで炎症を起こすとともに、酸化LDLなどを貪食することにより泡沫化することで発症する。一連の過程で、中膜平滑筋細胞は内膜に遊走し、コレラが相まって粥状硬化巣が形成されり。そこで我々は、歯周炎が動脈硬化の発症に関与するか否か、またその機序について明らかにする目的で、歯周炎を惹起したラットの胸部大動脈について検討した。その結果、自実験的歯周炎惹起4週間後の胸部大動脈において、血管内膜上に単球・マクロファージが正常ラットと比較し有意に接着しており、大動脈で炎症を誘導していることが明らかになった。我々の検討では、正常ラットと歯周炎ラットの間に血中炎症性サイトカイン量に差はなく、また大動脈局所で歯周病原細菌の遺伝子発現も認めなかった。
一方で、血中の単球・マクロファージにおける炎症性サイトカイン発現は、歯周病ラットにおいて正常ラットと比較し有意に増加していた。さらに歯周病ラット、正常ラットからそれぞれ単球・マクロファージは、歯周病ラットからそれぞれ単球・マクロファージを単離し、培養ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVECs)上に添加し、一定時間後に洗浄したところ、HUVECs において炎症反応(NF-kB) を活性化し、接着因子せあるvascular cell adhesion molecule 1 (VCAM-1) 発現を増加させていることが明らかになった。こうした事実は、歯周炎により局所で活性化した単球・マクロファージが血液中を流れていき、動脈内膜に接着して血管内皮細胞に炎症を誘導し、接着因子発現を増加することにより、さらなる炎症の誘導を進めている可能性を示唆する。
糖尿病は血管が悪くなる疾患であり、糖尿病最小血管合併症および動脈硬化性疾患の発症、進展を阻止することが、糖尿病のある人の寿命と QOL を確保するために大変重要。我々の基礎研究は、糖尿病における歯周病の合併が糖尿病血管合併症をさらに悪化させる可能性を示唆している。
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